聖ヨゼフとマルドケオについての第二の短い説教
ドモルネ神父様
はじめに
今年は特に教会の保護者なる聖ヨゼフに捧げられた年であり、また今は【聖ヨゼフの月である】3月ですから、本日は、天主が特別な方法で栄誉をお与えになったこの聖人についてお話ししたいと思います。
旧約は新約の実現のための告知であり、準備であったことは、皆さんご存じでしょう。例えば、イサクのいけにえはイエズスのいけにえのかたどりであり、残酷な総大将ホロフェルネの首をはね、自分の民を死から救うユディトは、悪魔を打ち負かし、私たちを救われる童貞聖マリアのかたどりでした。聖ヨゼフについてはどうでしょうか? 聖ヨゼフの使命や偉大さ、力は、旧約で告知されていたのでしょうか? はい、そうです。本日は、エステルとマルドケオの話を考察してみましょう。それによって聖ヨゼフに関する洞察がえられることでしょう。
1.エステルとマルドケオ:聖ヨゼフの第一の使命
ユダヤ人がバビロンに追放されていたとき、エステルという非常に若くて美しいユダヤ人女性がいました。彼女は両親を亡くしていたので、マルドケオという名のいとこの保護のもとで生活していました。ある日、アハシュエロスという名の王が新しい王妃を探すということがありました。多くの若い女性たちが王のところに連れてこられ、エステルもそのひとりでした。聖書にはこうあります。「王はほかのどんな女よりもエステルを愛した。どんな娘よりも、彼女は王の目にいつくしまれ、気に入られた。そして王は、彼女の頭に王冠をおいた」(エステル2章17節)。エステルは王国の王妃となり、王の宮殿に住みました。謙遜で控えめなマルドケオは、エステルの近くの宮殿の門のあたりに座っていて、常にエステルに助けと保護をもたらす準備ができていました。
エステルは童貞聖マリアのかたどりです。王は私たちの主イエズス・キリストのかたどりです。主はマリアをほかのどんな女性よりも愛し、どんな聖人や天使よりもすばらしく、恩寵に満ちたお方として創造されました。マリアをご自分の妻ではなく、ご自分の母とし、天地の元后とされました。エステルの世話や保護をしたマルドケオは、聖ヨゼフのかたどりでした。聖ヨゼフには、その美しさで天の宮廷を大いに喜ばせる童貞中の童貞が地上で託されました。これが聖ヨゼフの第一の使命でした。つまり、童貞聖マリアを自分の家に迎え入れ、王たるキリストが彼女を自分の御母とするために召されるまでの間、彼女の世話をし、彼女の童貞性と名誉を守ることでした。そして、イエズスの受胎とご誕生の後、謙遜で控えめな聖ヨゼフは、天の門であるマリアの近くに住み、常に彼女に助けと保護をもたらす準備ができていました。
自分の浄配である童貞聖マリアに対する聖ヨゼフのこの使命は終わっていません。確かに、マリアご自身は天の栄光の中におられ、何も必要とせず、もう保護も必要ありません。しかし、聖ヨゼフは地上でマリアの名誉を見守っておられます。聖ヨゼフはマリア信心が広まることを望み、そのために精力的に行動しておられます。地上でマリアが愛されれば愛されるほど、聖ヨゼフは喜ばれます。しかし、マリアを冒涜する者たちに対しては、彼は恐ろしいお方です。悪魔たちが聖ヨゼフを恐れるのはそのためです。
2.マルドケオは王を救った:聖ヨゼフの第二の使命
エステルの話を続けましょう。
先ほど、マルドケオは王の宮殿の門のあたりに座っていたと言いました。ある日、彼は二人の重臣が王に対して陰謀を企てているのを聞きました。そこで、マルドケオはすぐにそれをエステルに報告し、エステルは王に知らせ、王は救われました。
これは明らかに、聖ヨゼフが王の中の王であるイエズスを殺そうとしたヘロデから救ったことを思い起こさせます。天使によって警告された聖ヨゼフは、マリアに危険を知らせ、みなでエジプトに逃れたので、イエズスは救われました。これが聖ヨゼフの第二の使命でした。つまり、イエズスが成人の年齢になるまで父として世話をしながら見守ることでした。
イエズスご自身に対する聖ヨゼフのこの使命は終わりましたが、その使命はキリストの神秘体、つまり教会にまで拡大されています。聖ヨゼフは教会の保護者です。彼は教会とすべてのキリスト教徒を悪魔とその奴隷から守り、その神秘体が成人の年齢になるまで、つまり、数々の聖人が天国を満たすまで、それを続けることでしょう。私たちの個人的な困難のために、また物質的に必要なもののために聖ヨゼフを呼ぶのは良いことです。しかし、聖ヨゼフにはそれ以上のことができます。聖ヨゼフは、全教会をすべての敵から守ることができ、また、全教会を、霊的なものも現世のものも含めて、すべての必要なもので助けることができるのです。ですから、私たちは恥ずかしがらずに彼にお願いしましょう!
3.マルドケオはすべての侍従の上に上げられた:聖ヨゼフの偉大さ
エステルの話を続けましょう。
王を救った後、マルドケオはすぐには報われませんでした。彼は宮殿の門のあたりで、謙遜で控えめな生活を続けていました。ついに王は、マルドケオが自分のためにしてくれたことを思い出し、彼に他の全ての侍従にまさる栄誉を与えることを決めました。そして王はマルドケオにこう命じました。「王服を着て、王の乗る馬を引いてこさせ、頭に冠をいただかせる。王服と馬とは、長官らの一人に持ってこさせ、町の広場でその馬に乗せ、『見よ、王が栄誉を与えようと望まれる人には、このようにされる』と呼ばわらせる」(エステル6章7-9節)
聖ヨゼフも同じで、イエズスを死から救ったにもかかわらず、彼は天主に忘れられているように見えました。エジプトへの逃亡と生活は容易ではありませんでした。その後、ナザレトでは、彼の生活は、救い主の救い主である彼が死ぬまで目立たず謙遜でした。しかし、その死後、天国で聖ヨゼフは他のすべての聖人にまさる栄誉を受け、全キリスト教会に対する権威と力を与えられました。特に16世紀以降、天主の御摂理は、教会の生活の中における聖ヨゼフの偉大さと主要な役割をますます明らかにし、聖ヨゼフに依り頼むよう私たちに命じています。
マルドケオはエステルを通してユダヤ人を救った:聖ヨゼフのマリアを通した力
エステルの話に戻りましょう。
この王の宰相は、アマンという名の人でした。彼はユダヤ人の敵でした。彼はユダヤ人たちに対するいつわりの告発をして、すべてのユダヤ人の絶滅を画策しました。聖書はこう言っています。「ユダヤ人の間に大きな悲しみ、断食、涙があり、悲鳴が聞かれた。多くの人にとって、袋と灰とが寝床となった」(エステル4章3節)。それは天主に救いを乞い願うためでした。マルドケオはもちろん、この状況を非常に心配していました。マルドケオはエステルのところに行って何が起こっているかを説明し、聖書によれば、彼は「王の情けを請うて自分の民のために取り次げと、エステルに命じた」(エステル4章8節)。エステルは王のもとへ行き、王に自分と自分の民を殺さないように乞い願い、彼女の嘆願のゆえに、彼女はユダヤ人たちの救いと、宰相アマンの断罪を獲得したのです。ですから、マルドケオはエステルを通してユダヤ人たちを救ったのです。
同様に、聖ヨゼフはマリアを通して教会を救います。宰相アマンは、人々の永遠の死と教会の破壊を望む悪魔のかたどりでした。ユダヤ人たちは、悪魔とその奴隷の憎悪と迫害に直面している地上に住むカトリック教徒のかたどりでした。マルドケオは、教会の救いのために童貞聖マリアに取り次ぐ聖ヨゼフのかたどりでした。王は、そのどのような要求も拒否できないほどマリアを愛しておられる私たちの主イエズス・キリスト、悪魔の頭を砕き、童貞聖マリアを通して私たちを救いたいと望んでおられるイエズス・キリストのかたどりでした。
聖ヨゼフがどれほど強い力を持っておられるかを理解してください。聖ヨゼフはマリアの最愛の浄配ですから、自分の望むことを何でも自由にマリアに願うことがおできになります。浄配であるヨゼフへの愛のゆえに、マリアはヨゼフの願いに喜んで同意してくださいます。そして、御母であるマリアへの愛のゆえに、イエズスはマリアの願うことは何でも喜んでかなえてくださいます。ですから、結局、聖ヨゼフの願いは全て、私たちの主イエズス・キリストによってかなえられるのです。これが聖ヨゼフの力です。
結論
エステルの物語は、聖ヨゼフの使命や偉大さ、力について語っています。非常に多くの霊魂が霊的な死の危険にさらされている現在の教会の大きな危機の中で、私たちはこのユダヤ人たちがしたようにしなければなりません。つまり、彼らが天主に祈り、断食し、罪を償うために苦行をしたように、私たちもそれをしなければなりません。彼らが自分たちを救ってくれるようマルドケオに依り頼んだように、私たちも確信をもって聖ヨゼフに依り頼まなければなりません。天主の御摂理が、教皇ピオ九世に聖ヨゼフを教会の保護者と宣言させたのなら、それは遊びのためではありません! それは、天主が聖ヨゼフを通して私たちの救いを与えたいと望んでおられるからです。ですから、私たちは天主のご意志に喜んで従い、3月19日に敬虔に聖ヨゼフへ私たちの奉献を行うための準備をしましょう。