【参考資料】バチカンの透明性に関する新条項:もう一つのファサード作戦(よく見せかける作戦)
アルド・マリア・ヴァッリ 2021年4月30日
バチカンの透明性に関する新条項:もう一つのファサード作戦
バチカンの幹部は、部署の長や管理者である枢機卿たちを含め、テロやマネーロンダリング、脱税などの有罪判決や捜査を受けていないことを示す宣言書に署名する必要があります。さらに、タックスヘイブン(租税回避地)に資産を保有したり、教会の教理に反する活動をする企業に投資したりしてはなりません。これらの規定は、教皇が新たに発表した自発教令に記載されており、その中には財政運営の透明性に関する条項が含まれています。この宣言書には、あらゆる役職や地位に就く際に署名しなければならず、2年ごとに繰り返さなければなりません。また、バチカンの全職員が40ユーロ【約5,200円】以上の贈り物を受け取ることも禁じられています。宣言書の全文はこちらからご覧いただけます。
しかし、簡単なコメントをさせてください。新しい自発教令は信じられないものです。教皇が枢機卿たちや管理責任者たちにこのような宣言書に署名を強いるということは、二つのうちの一つが真実でなければなりません。つまり、教皇が自ら選んだ人材に自信がないことを意味するか、あるいは「聖なる宮殿」の腐敗、不正、不道徳の状態が常態化していることを意味するかです。どちらにしても、バチカンの支配階級には悪い印象を受けます。あるいは、第三の可能性として、教皇が、不正と戦う自分の偉大さを世界に示すために、「pro domo sua」【自分の家のために=自分の利害のために】この措置を決定したということです。しかし、この場合でも、この作戦はローマ教皇庁、バチカン市国、聖座の信頼性に壊滅的な打撃を与えることになります。しかし、そのような信頼性は、サンタ・マルタ館の現在の住人【教皇フランシスコ】の気がかりであるようには思えません。
外部から見る者は、汚職との戦いに力を尽くしてきたベルゴリオが、汚職の協力者たちの犠牲になったというメディアのイメージを信じてしまうかもしれません。しかしバチカン内部の力学を知る者には、今日の宣言とは現実を偽るためのもう一つの努力であり、そこで開示された情報が実際に起こっていることとは正反対であるということを知っています。カルロ・マリア・ヴィガノ大司教のように、汚職と戦おうとし、バチカン市国(あるいは行政庁)の予算を浄化するために効果的に働いた人たちは、システムに対する脅威であるという理由で、「昇進」(promoveatur ut amoveatur-「その人を排除するために昇進させる」)させられ、信頼のある協力者のチームは分散させられたのです。その中でも最も重要なエウジェニオ・ハスラー(Eugenio Hasler)は、【2020年3月27日】「あわれみの教皇」から、言葉にできないような扱いを受けました。出頭を求められた彼は、何の理由もなくその場で解雇され、メディアの笑い者となり、その尊厳は破壊されました。
また、ペル枢機卿をはじめとする使徒座の財産を管理する優れた人々の業績が、根拠のない告発や、害によって阻まれたことも忘れてはなりません。実際に、このオーストラリア人のペル枢機卿は不当な投獄の刑を受けましたが、後に完全に無罪となりました。その一方で、バチカンの財政破綻の立役者たちの立場はそのままであるだけでなく、彼らの脇を固めるのは大部分が妥協した人物であり、したがって極めて脅迫しやすく、簡単に操ることができるのです。
中絶薬を製造する製薬会社への出資など、ここ数カ月で明らかになってきたバチカンのスキャンダルは、粉飾決算でごまかすことはできません。また、ロンドンでの不動産投機で糾弾されたあとでベッシウ枢機卿が解任されたからといって、大げさな自発教令で世論を魅了できると信じている人々の極めて重大な責任を軽減することはできません。自発教令を発表した者たちこそが、その代わりに、慢性的な不正行為の状況を決定的に癒やすことができたはずの人々を解任することで、腐敗と利益相反の条件を自ら作り出したまさにその者たちなのです。
ベルゴリオはまたしても、教会のイメージと威信を失墜させて、自分を道徳的な人物として前面に押し出し、個人的な利益を得ようと決心したように思えます。しかし、歴史が私たちに教えてくれるのは、独裁者の典型である人格崇拝は、容易に「記憶の抹殺」(damnatio memoriae)に変わるということです。
アルド・マリア・ヴァッリ 2021年4月30日
バチカンの透明性に関する新条項:もう一つのファサード作戦
バチカンの幹部は、部署の長や管理者である枢機卿たちを含め、テロやマネーロンダリング、脱税などの有罪判決や捜査を受けていないことを示す宣言書に署名する必要があります。さらに、タックスヘイブン(租税回避地)に資産を保有したり、教会の教理に反する活動をする企業に投資したりしてはなりません。これらの規定は、教皇が新たに発表した自発教令に記載されており、その中には財政運営の透明性に関する条項が含まれています。この宣言書には、あらゆる役職や地位に就く際に署名しなければならず、2年ごとに繰り返さなければなりません。また、バチカンの全職員が40ユーロ【約5,200円】以上の贈り物を受け取ることも禁じられています。宣言書の全文はこちらからご覧いただけます。
しかし、簡単なコメントをさせてください。新しい自発教令は信じられないものです。教皇が枢機卿たちや管理責任者たちにこのような宣言書に署名を強いるということは、二つのうちの一つが真実でなければなりません。つまり、教皇が自ら選んだ人材に自信がないことを意味するか、あるいは「聖なる宮殿」の腐敗、不正、不道徳の状態が常態化していることを意味するかです。どちらにしても、バチカンの支配階級には悪い印象を受けます。あるいは、第三の可能性として、教皇が、不正と戦う自分の偉大さを世界に示すために、「pro domo sua」【自分の家のために=自分の利害のために】この措置を決定したということです。しかし、この場合でも、この作戦はローマ教皇庁、バチカン市国、聖座の信頼性に壊滅的な打撃を与えることになります。しかし、そのような信頼性は、サンタ・マルタ館の現在の住人【教皇フランシスコ】の気がかりであるようには思えません。
外部から見る者は、汚職との戦いに力を尽くしてきたベルゴリオが、汚職の協力者たちの犠牲になったというメディアのイメージを信じてしまうかもしれません。しかしバチカン内部の力学を知る者には、今日の宣言とは現実を偽るためのもう一つの努力であり、そこで開示された情報が実際に起こっていることとは正反対であるということを知っています。カルロ・マリア・ヴィガノ大司教のように、汚職と戦おうとし、バチカン市国(あるいは行政庁)の予算を浄化するために効果的に働いた人たちは、システムに対する脅威であるという理由で、「昇進」(promoveatur ut amoveatur-「その人を排除するために昇進させる」)させられ、信頼のある協力者のチームは分散させられたのです。その中でも最も重要なエウジェニオ・ハスラー(Eugenio Hasler)は、【2020年3月27日】「あわれみの教皇」から、言葉にできないような扱いを受けました。出頭を求められた彼は、何の理由もなくその場で解雇され、メディアの笑い者となり、その尊厳は破壊されました。
また、ペル枢機卿をはじめとする使徒座の財産を管理する優れた人々の業績が、根拠のない告発や、害によって阻まれたことも忘れてはなりません。実際に、このオーストラリア人のペル枢機卿は不当な投獄の刑を受けましたが、後に完全に無罪となりました。その一方で、バチカンの財政破綻の立役者たちの立場はそのままであるだけでなく、彼らの脇を固めるのは大部分が妥協した人物であり、したがって極めて脅迫しやすく、簡単に操ることができるのです。
中絶薬を製造する製薬会社への出資など、ここ数カ月で明らかになってきたバチカンのスキャンダルは、粉飾決算でごまかすことはできません。また、ロンドンでの不動産投機で糾弾されたあとでベッシウ枢機卿が解任されたからといって、大げさな自発教令で世論を魅了できると信じている人々の極めて重大な責任を軽減することはできません。自発教令を発表した者たちこそが、その代わりに、慢性的な不正行為の状況を決定的に癒やすことができたはずの人々を解任することで、腐敗と利益相反の条件を自ら作り出したまさにその者たちなのです。
ベルゴリオはまたしても、教会のイメージと威信を失墜させて、自分を道徳的な人物として前面に押し出し、個人的な利益を得ようと決心したように思えます。しかし、歴史が私たちに教えてくれるのは、独裁者の典型である人格崇拝は、容易に「記憶の抹殺」(damnatio memoriae)に変わるということです。