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聖母はシメオンの預言のためにイエズスのご受難といけにえのあらゆる恐怖を常に先取りして生きなければならなかった。聖母は、謙虚かつ寛大に天主のみ旨を受け入れられた

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聖母の第一の御悲しみについての説教

ドモルネ神父

はじめに

この前の木曜日には、童貞聖マリアの七つの御悲しみの祝日をお祝いしました。この七つの御悲しみとは、聖なる人シメオンの預言、エジプトへの逃避、エルザレムの神殿でのイエズスの喪失、十字架を担ってカルワリオへ歩いていかれるイエズスとの出会い、十字架刑、イエズスの十字架降下、イエズスの埋葬です。聖母は、そのご生涯において、7回以上の苦しみを味わわれました。しかし、7という数字は、完全や完成を意味する神聖な数字です。ですから、教会はこの七つの主要な御悲しみを選び、それらを通して、マリアのすべての苦しみをたたえるようにしたのです。今日は、この七つの御悲しみのうち、第一の御悲しみについて、少しお話しします。

1.第一の御悲しみ:聖なる人シメオンの預言

聖母の第一の御悲しみは、聖なる人シメオンの預言です。イエズスのご誕生後、マリアとヨゼフは、モーゼの律法に従って、エルザレムの神殿に行かれ、そこでイエズスを奉献なさいました。お二人は、聖なる人シメオンにお会いになり、シメオンは、幼きイエズスを腕に抱いて、こう言いました。「この子は、イスラエルの多くの人が、あるいは倒れ、あるいは立ち上がるために、逆らいのしるしとして立つ人です」。また、マリアに、こう付け加えて言いました。「あなたの心も、剣(つるぎ)で貫かれるでしょう」(ルカ2章34-35節)。

この預言が、なぜ、童貞聖マリアにとって、大きな苦しみの原因となったのでしょうか? なぜなら、それ以来、マリアは、この預言のために、ご自分の子であるイエズスのご受難といけにえのあらゆる恐怖を、常に、先取りして思い描きながら、生きてゆかねばならなくなったからです。聖母は、救い主の御苦しみについての聖書の預言をよくご存じでした。マリアは、愛らしいご自分の子を見るたびに、その御子がご受難のひどい拷問を受けておられるのを、ご覧になっていたのです。マリアの母としての御心は、常に悲しみで引き裂かれていたのです。このことは、皆さんのうちで母親である方々には、簡単にご理解いただけると思います。

この御悲しみの中で、聖母は、どのような態度を取られたでしょうか? 聖母は、謙虚かつ寛大に、天主のみ旨を受け入れられました。世の贖いのために天主が選ばれた道は、苦しみの道です。聖母は、この道を歩むことを受け入れられました。エルザレムの神殿で、またご生涯を通じて、聖母は、お告げの日に言われたことを、繰り返しておられました。「われは主のつかいめなり。仰せのごとくわれになれかし」(ルカ1章38節)。聖母は、天主への愛から、私たちの主イエズスへの愛から、そして私たち全員への愛から、そうなさったのです。

2.キリスト教徒の苦しみ

地上の生活での苦しみを受け入れるという、そのような覚悟を、私たちももたなければなりません。キリスト教徒であるということは、苦しみを通して、贖いのみわざに参加することです。私たちの主は、聖パウロについて、こう言われました。「私の名のために、どれほど苦しまねばならぬかを、私は彼に教えよう」(使徒行録9章16節)。そして、聖パウロは後に、聖ティモテオにこう言いました。「キリスト・イエズスにおいて敬虔に生きようとする者は、しいたげられる」(ティモテオ後書3章12節)。これは、私たち一人一人に当てはまることです。私たちは、この現実を寛大に受け入れなければなりませんし、この現実を恐れてはなりません。なぜなら、キリスト教徒の苦しみ、つまり、私たちの主や聖母と同じ精神で受ける苦しみは、私たちを押しつぶすどころか、私たちを高貴な者とするからです。この苦しみは、私たちの中に、天主と隣人への真の愛を育んでくれます。この苦しみは、私たちを高慢と利己主義から、自由にしてくれます。この苦しみは、私たちを罪から、そして地獄から、自由にしてくれます。この苦しみは、私たちが、天国という永遠の報いを得られるようにしてくれるのです。

キリスト教徒であるということは、天主のご計画に従って、自分の人生における苦しみを受け入れることを意味します。また、キリスト教徒であるということは、個人の生活や家庭生活から、キリスト教の理想と相容れないすべての事、快適さ、態度、人間関係を排除することを意味します。ですから、キリスト教徒であるということは、真の自己否定を意味します。それは、ある程度の苦しみをもたらすかもしれませんが、その自己否定が、永遠という、素晴らしい実を結ぶのです。私たちの主のみ言葉を思い出してください。「私の名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、妻、子、土地を捨てる者は、みなその百倍のものを受け、永遠の命を受け継ぐであろう」(マテオ19章29節)。

3.幸福の幻想

私たちの主イエズスと聖母は、私たちがお二人に従ってカルワリオへ行き、そこから永遠の幸福に至るよう、招いておられます。その反対に、サタンと、イエズス・キリストのこの世の敵は、私たちがイエズスとイエズスの十字架を拒絶し、苦しみから逃れ、自分の欲しいものを何でも手に入れるよう、煽(あお)り立てます。彼らは、快楽や富や人間的な栄光を通して、私たちに幸福を約束するのです。これは幻想であり、これに屈する人々は、永遠の不幸に陥ります。この真理をよく表しているのが、次の物語です。

聖ウルフラムは、7世紀の司教で、ヨーロッパ北部の使徒でした。当時、この国の支配者だったラドボド公は、異教徒で、偶像を崇拝していました。しかし、聖ウルフラムの説教によって、彼はその信仰を揺るがされ、キリスト教徒になろうと考えました。その時、悪魔が、彼の改宗を止めようとしました。悪魔は、額に宝石の冠をつけ、金で編んだ豪華な衣服に身を包んで、夢の中で、ラドボド公の前に現れました。悪魔は、彼にこう言いました。「人間の中で最も強い者よ、おまえを誘惑して、おまえの先祖たちが崇拝していた神々を捨てさせようとまでしたのは誰だ?おまえの先祖たちの宗教に、忠実であり続けよ。そうすれば、おまえは最も立派な宮殿を手に入れるであろう。キリスト教徒たちも、おまえに、永遠の光の宮殿を約束する。しかし、それを見せるよう、彼らに頼んでみよ!...彼らは、それをおまえに見せることができないであろう。その反対に、おまえのしもべの一人を、キリスト教徒の一人と一緒に送れば、私自身が案内人となり、おまえのために用意したものを、彼らに見せてやろう」。ラドボド公は、目を覚ますと、すぐに聖ウルフラムを呼びだし、その夢のことを話しました。聖ウルフラムはすぐに、悪魔がこの君主の改宗を阻むために策略を巡らせていることを理解しました。そこで聖ウルフラムは、この危険な幻想を信じないで、急いで洗礼を受けるようにと勧めました。しかし、ラドボド公は、悪魔が提案したように、つまり、すぐに天国を垣間見させてもらうように頼むのだと言って、ゆずりませんでした。司教は、ラドボド公があまりに頑なであるのを見て、他の異教徒たちも同じようにだまされることを恐れて、ラドボド公のしもべと一緒に助祭を送り、サタンの約束を確認させることに同意したのです。

町の門で、二人の使者が一人の男を見つけると、その男は、二人にこう言いました。「では、おいでください。ラドボドの先祖たちの神がラドボドのために用意した宮殿をお見せしましょう」。二人が長い間歩くと、二人の前に広々とした立派な大通りが現れました。その大通りの先には、宝石を敷き詰めた大きな中庭がありました。そこから二人は、豪華な家具や装飾品で飾られている、大理石と金でできた宮殿に入りました。一番豪華な部屋には、その輝きと富においてすべてを凌駕するような玉座がありました。案内人は二人の使者に、「ご覧ください。これが、ラドボドの神が死後に与えてくださる住居です」と告げました。助祭は、最初はこの光景に大いに驚きましたが、こう言ったのです。「もし、これらのものが全能の天主のものであるならば、永遠に立ち続けますように。しかし、もし、悪魔のものであるならば、消え去りますように」。そして、助祭は十字架のしるしをしました。するとたちまち、悪魔に他ならない案内人は姿を消し、黄金の宮殿は泥の塊と化しました。助祭とラドボド公のしもべは、自分たちだけが沼の真ん中にいることに気づき、大変な苦労の末、そこから抜け出しました。その後、自分たちの町に戻るのに、三日間歩かなければなりませんでした。二人が町に到着すると、ラドボド公は、洗礼を受けることなく、突然倒れ、亡くなったことを告げられました。これが、彼の不信仰に対する正当な罰だったのです。

結論

親愛なる信者の皆さん、サタンとこの世が約束する幸福は、私たちがそこから抜け出せなくなって死んでしまう、悪臭を放つ泥の沼のようなものです。私たちの本当の幸福は天国にあり、天国への道は、十字架につけられた私たちの主イエズスです。私たちの主イエズスの御苦しみにあずかることは、キリスト教徒の人生に必要なことのひとつです。天主の御摂理が私たちの人生においてご計画なさった苦しみを、私たちが寛大に受け入れられるよう、御悲しみの聖母が助けてくださいますように。これらの苦しみは、私たちを滅ぼすためではなく、私たちを完成させるため、私たちの永遠の救いのためのものなのです。

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