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聖母の共同受難の祝日のためのルフェーブル大司教の説教

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アヴェ・マリア・インマクラータ!

愛する兄弟姉妹の皆様、

 日本の守護者である聖母の汚れなき御心の祝日、おめでとうございます。8月22日は、聖母の被昇天の八日間の最後の祝日でもあり、(イエズス・キリストの昇天の後で、イエズス・キリストの聖心を祝うというリズムが尊重されています。) 
 今から480年前の、1534年8月15日、聖イグナチオ・デ・ロヨラは、別の六名の同志たちと、パリのモンマルトルの丘のふもとの、小さな聖堂で「清貧」「貞潔」「聖地巡礼」の誓願をたてました。これが、イエズス会の実質的な始まりでした。この聖イグナチオの同志六名の内の一人が、それから十五年後(1549年8月15日)に日本に上陸する聖フランシスコ・ザベリオでした。

 イエズス会の実質的な創立480年と、イエズス会の復興200周年を、天主様に感謝しつつ、聖母の被昇天と、聖母の汚れなき御心の祝日を過ごしました。

 願わくは、聖母の汚れなき御心が私たちを導き、聖ピオ十世会の会員である私たちが聖母の汚れなき御心の従順な道具であり続けますように!

 聖母の汚れなき御心よ、我らのために祈り給え!
 聖イグナチオ、我らのために祈り給え!

 今日は、ルフェーブル大司教様のなさった「聖母の共同受難の祝日」のためのの説教を日本語でお届けいたします。


天主様の祝福が豊かにありますように!
トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)


聖母の共同受難の祝日のためのルフェーブル大司教の説教

原文はこちら


聖母の共同受難の祝日のためのルフェーブル大司教の説教
一九八一年四月十日、スイス、エコンにて

【Compassionは、ラテン語の語源を尊重して、Cum 共に passio 苦しむから「共同受難」と訳しました。バルバロ神父様の毎日のミサ典書の、七つのおん悲しみの祝日の説明の中では「同感受難」とも訳されています。】

父と子と聖霊とのみ名によりて。アーメン。

十字架のみ足元に立つ聖母

 一本の剣が聖母の御心を刺し貫くでしょう、と福音書には書かれています。この剣で刺し貫かれた御心は、言うまでもなく彼女の天主なるおん子のご受難と結びついている、ということに他なりません。福音書はまたこうも言っています。主イエズス・キリストのご受難の間、そしてご死去の瞬間、聖母はおん子のかたわらに佇んでいた、と。"Stabat Mater iuxta Crucem. おん母は十字架の下に佇み給えり"

 ですから、天主のみ摂理は、聖母がおん子の誕生、おん子が地上にお下りになられたこと、おん子の幼少時代、おん子の隠れた生活と公生活に結びつくのを望まれただけでなく、なによりもまず、おん子のご受難に結びつくことを望まれたのだということを、私たちは否定してはなりません。事実、最も重要な瞬間──聖主イエズス・キリストの "時"──は、彼の十字架上での死、ご受難の時であったなら、聖母のそれは、彼女の共同受難(Compassion)、主イエズス・キリストのご受難との親密な一致でした。

聖母の七つのおん悲しみへの信心

 この信心は教会内に大変古くからあるものです。聖母の七つのおん悲しみと童貞女の共同受難の祝日がいつ始まったのか、正確にはわかっていません。しかしながら、教会内では、聖母のおん悲しみ、とりわけ共同受難を黙想するために、童貞マリアご自身の直接のご介入を通して、いくつかの修道会が創立されました。童貞マリアのご要求により、七人の創立者たちによって設立されたマリアの下僕会(The Servites of Mary)が良い例です。会員たちは、特別に聖母のおん悲しみを黙想するために、悲しみに満ちた童貞女に一致するために捧げられています。

 この観想へと捧げられたもう一つの修道会は、十字架の聖パウロの御受難会です。御受難会には、この会出身のたくさんの聖人たちがおります。その中の一人、おん悲しみの聖母の聖ガブリエルは、修道名に「おん悲しみ "Addolorata"」を取りました。まさしく彼は童貞マリアのおん苦しみを黙想しつつ生涯を送ったからです。

ご苦難のイエズスに自らを結びつけること

 なぜ,これについて黙想するのでしょうか? なぜ聖母がご自身の共同受難のうちに、ご自身の苦しみのうちに、ご自身の釘付けのうちに聖主のご受難に一致しておられたことを黙想するのでしょうか? 聖主イエズス・キリストのご受難に、さらに親密に私たち自身を結びつけるためです!

 かつて、十字架上で刺し貫かれたイエズスの聖心とともに苦しみ、十字架上の聖主イエズス・キリストのお考えに一致した魂が存在したとするなら、それは童貞マリアの御心でした! 彼女は決して罪を犯したことがなく、聖主のように、自分自身のために償いをする必要はありませんでした。しかしながら、このお二人は苦しむこと、恐ろしく苦しむこと、深く苦しむこと、お二人の肉体において苦しむことを望まれました。

愛に燃える二つのみこころ

 では、この二つのみこころ、イエズスとマリアのみこころがお感じになられたことに、私たちは入り込もうとしてみましょう。聖主イエズス・キリストのご受難と童貞マリアの共同受難は、二つとも、愛徳によって深く突き動かされていたことは間違いありません。

 お二人のみこころは愛徳に食い尽くされ、聖霊の愛とともに燃えておられました。天主のみことば、聖霊とともに一つの本性なる聖主は、聖霊の愛、ご自分の存在そのものが火となって燃え上がるこの霊によって食い尽くされました。天主のみことばのペルソナは、聖主の霊魂、肉体、肉の心臓のみならず、聖霊によって燃え上がりました。童貞マリアはご自分の天主のおん子を模倣され、彼女もまた天主なるおん子のそれについてのご自分の感情を合わせようとされました。彼女もまた聖霊に満たされておられました。

おん父の光栄を回復するために

この聖霊によって燃え上がった二つのみこころの最初の、そして中心となる目的は、おん父への愛であったと、私たちは決して忘れてはなりません。

 事実、聖霊の愛、この「焼き尽くす炎」はおん父へと導きます。天主の愛とは「天主は愛にてまします」と、これに他なりません。ですから、聖霊は私たちを天主へと導くこと、おん父へと導くこと以外のことをなさいません。従ってイエズスはまず最初に、おん父なる天主の光栄を回復するために苦しまれました。童貞マリアもまた、おん父の光栄の回復のため、天主なるおん子の苦しみに一致されました。

 おん父は無限の、間違いなく無限の栄光を、ご自分の天主なるおん子よりお受け取りになられました。おん父はまた、特別の栄誉をいただいた被造物より生み出された、最大の栄光をお受け取りになられました。この被造物とは、天主なるおん子に一致した童貞マリアのことです。聖母はまことに贖われた最初の者となりました。聖母は罪をまったく知らなかったという意味で完全に贖われたのです。それは、聖主のご託身を考えに入れたために、聖母は無原罪でお宿りになられ、そうして罪を決して知ることはなかったのです。

 十字架の足元にて、聖母は苦しみのうちにおん父の栄光を歌いました。悲しみのうちに天主の栄光を歌いました。聖母は地上における天主の光栄、そして栄光の回復を望んでいたのです。

あわれみに満ちた愛

 お二人を食い尽くしたこの愛は、お二人をあわれみで満たしてくださいました。事実、すぐれた愛、すぐれた慈悲の直接の結果は、あわれみです。なぜなら、二つのみこころに取り付いたこの愛が広められることを望み、この愛を持たない人々、この愛が欠けているすべての人々に伝えられることを望んでいるからです。

 聖主イエズス・キリストは、アダムとエワ以来のすべての罪深い人類、この世界に生まれたすべての人間たちをごらんになって──ご自分が人類の造り主で贖い主であるがゆえに、ご自分の神性によって、このことについてはっきりと見ておられ、完全な知識を持っておられました──このすべての惨めさ、おん父について、造り主にして贖い主について考えない、天主から遠く離れてしまったすべての人間たちをご存知でした。聖主はすべてをごらんになって、その聖心はあわれみで満たされました。このあわれみは犠牲へと導きます。あわれみは犠牲の源です。あわれみは、愛徳が人類の心に打ち立てられるよう、完全に犠牲にする覚悟ができているがゆえに、犠牲へのすべての道なのです。

 こうして聖主は苦しまれました。聖主は肉体において苦しまれました──ゲッセマニでの激しい悶えの中、おん血のしずくが聖主のおん額から滴り落ちました。聖主はあわれみに満ちておられました。そして童貞女は、まったく同じ理由のために、聖主のおん苦しみを共有することを望まれました。彼女も、このすべての霊魂たちについて考えておられました。お二人は死に至るまで、殉教に至るまでともに苦しまれ、苦しむことを望まれたのです。

 聖主イエズス・キリストは、聖霊が至聖三位一体の愛ですべての心とすべての霊魂を燃え上がらせることができるよう、おん父と霊魂の贖いのために、ご自分の最期をまことに与えたのならば、童貞マリアはその瞬間に死ななかったにせよ、ご自分の命を捧げ、殉教を苦しまれたのです。聖母はまことに殉教者の元后と呼ばれます。聖母もまたご自身を、ご自分のおん血を、ご自分の命を、ご自分のすべての所有物、とりわけ、ご自分の天主なるおん子をお与えになりました。聖母は霊魂たちの贖いのため、善き主にすべてをお与えになりました。Mater Misericordiae あわれみのおん母よ。これこそが、童貞マリアのおん悲しみの原点なのです。


平和と喜びとともに苦しむこと

 ご受難において、悲しみは絶望へと導き、この悲しみが絶望のたぐいをイエズスとマリアの霊魂に置いたかも知れないと、私たちは決して考えてはなりません。いいえ、決してそうではありません! この苦しみの原点であったまさしく愛徳の故に、愛徳はお二人のみこころに平和と喜びをもたらしました。受難と苦しみとあわれみが、深い喜びとともに一つになることは信じ難いことかも知れません。ですが、聖主イエズス・キリストの聖心は真実に喜びに満たされていました。そして、聖主と一つに結ばれた童貞マリアの御心もそうでした。

 お二人は至聖なる三位一体の喜び、偉大な愛徳によって与えられた喜びに満たされていました。愛徳が霊魂にもたらす平和は、言葉では言い表せない平和です。イエズスとマリアは、肉体において苦しみ、深い悲しみや絶望の感情の中にある多くの霊魂たちのように、拷問を受けていたのではありませんでした。いいえ、イエズスとマリアはそのようなやり方で苦しんだのはありませんでした。お二人は苦しまれました。でもお二人のみこころは、間違いなく安らぎのうちに、平和のうちにあり、そのために聖母は十字架のみ足元に佇んでいることができたのです。もし聖母がこの平和を、この愛徳を、ご自分のおん子の苦しみに結びつく親密さと深い喜びを、おん子の愛徳に結びつく喜びを、聖霊とともに満たされている喜びを持っていなかったら、聖母は十字架のみ足元に佇んでいることはできず、福音書は「Stabat Mater おん母は佇めり」とは言わなかったでしょう。聖母を取り囲む三つのペルソナは、お二人の外見上の苦しみ以上のもの──おん涙と外見に表れた感情を通して──をほぼ確実に教えてくださいました。聖母は平穏なまま、平和のうちにとどまられました。

聖ピオ十世会の奉献女(オブレート)の保護者

 親愛なるシスターたちよ、ここにあなた方の保護者がおられます。あなた方は自分たちを私たちに結びつけるためにここに来ることを選び、とりわけ、ほぼすべての奉献女たちの場所である、ここエコンの修道院、少なくともすべての奉献女たちが結びついてるところへとやって来ました。あなた方は自分自身を司祭たちに結びつけるために来ました。司祭はもう一人のキリストだからです。司祭はみずからを聖主イエズス・キリストのご受難に、特に彼が捧げるミサ聖祭の犠牲を通して結びつけなければなりません。従って司祭はイエズスの聖心の思い、そしてまたマリアの思いと一体とならねばなりません。司祭は童貞女に、我をしてこのお二人の思いを理解せしめ給えと懇願しなければなりません。お二人の思いをさらに感じ取り、より一体となるためにです。

 ですから、司祭たちの助け手となりなさい。あなたたちの両手で助けるだけではなく、霊魂と精神をもって、聖主の統治、聖主の愛を広げるために、司祭職における、聖主イエズス・キリストの犠牲の精神における、十字架における助け手となりなさい。

 このようにして、あなた方は自分たちを特別なやり方で童貞マリアに一致させるでしょう。聖母が天主なるおん子にご自身を一致させたようにです。そしてあなた方は聖主の苦しみを共有するでしょう。あなた方は霊魂の贖いにとても力強いやり方で貢献するでしょう、あなた方ができる手段に従って、天主のみ摂理がお与えになった手段に従って。あなた方は、あなたがたが仕える司祭たちのために、神学生たちのために、彼らがまことの司祭になりますように、まことのもう一人のキリストになりますように、彼らが自分たちをさらにもっと深遠な、もっと完全なやり方で聖主イエズス・キリストのご受難に結びつけますようにと祈ることで、みずからをさらに深遠な方法で司祭職へと結びつけるのです。

 あなた方は童貞マリアにこの恩寵を乞い求めるでしょう。そうして、聖主イエズス・キリストの統治が広がるように、あなた方の苦しみ、あなた方の犠牲を、この意向のためにお捧げしなさい。

父と子と聖霊のみ名によりて。アーメン。

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