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トリエント公会議による公教要理 祈りについて 「誰のために祈るべきか」 (聖ピオ十世会訳)

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アヴェ・マリア・インマクラータ!

愛する兄弟姉妹の皆様、

 ローマ公教要理(トリエント公会議による公教要理)の「祈り」についての部分を更にご紹介します。

 今回は、「誰のために祈るべきか」についてです。公教要理は、敵味方、国籍、宗教の別を問わず、全ての人のために祈らなければならないことを教えています。どうぞごゆっくりお読み下さい。

天主様の祝福が豊かにありますように!

トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)



§5 誰のために祈るべきか

敵味方、国籍、宗教の別を問わず、全ての人のために祈らなければなりません。

なぜなら、敵であれ、外国人であれ、異教徒であれ、隣人であることに変わりないからです。天主が私たちに隣人を愛することをお命じになったのですから、私たちが当の隣人のために祈るべきことは当然しごくです。

祈りは愛の重要な務めだからです。実際、これこそ使徒パウロが「すべての人のために祈るよう勧める37」、という言葉で促していることに他なりません。

祈りにおいてまず第一に、救霊に関することを願い求めねばなりません。身体に関することはその後のことになります。

私たちはまず、霊魂の牧者たちのために祈らなければなりません。使徒パウロはコロサイの信徒に「天主が私の宣教に活路を開いてくださるよう祈るように38」願って、私たちにこのことを示しています。使徒は、テサロニケの信徒にも同様の願いをなしています39。

さらに、使徒行録において、「ペトロのために、教会はたえず天主に祈りつづけていた40」ことが記されています。聖バジリオもまた、『道徳論』における次の章句をとおして、私たちにこの義務を思い起こさせています。「真理の言葉の宣布に携わる者のために祈らなければならない。41」

第二に私たちは、同じ使徒パウロの教えに即して為政者のために祈らなければなりません。敬虔で正義に対する熱意に満ちた為政者を持つことが、どれほど公の善益となるかは、皆に周知のことです。したがって、他者の上に立つ者が、その役職にふさわしい者たるよう天主に願うことが必要です42。

聖人らの模範は、善人、義人のためにも祈るべきことを私たちに教えています。なぜなら彼らもまた、他の者の祈りを必要とするからです。天主がこのように思し召しになったのは、自分より劣った者たちの祈りが必要であるのを認めて、当の義人が傲慢に陥らないようにするために他なりません。
また主は、私たちを迫害し、中傷する者たちのためにも祈ることをお命じになっています43。

聖アウグスチヌスの有名な言葉によって知られているように44、教会は使徒たちから、教会の外にいる者らのために切なる祈りをささげる習慣を受け継いでいます。これは、かかる祈りをとおして、不信仰者に信仰が与えられ、偶像崇拝者が不敬な誤謬から解き放たれるため、また、ユダヤ教徒が自らの知性を覆う闇を打ち払って真理の光を受け入れ、異端者が正気に立ち戻ってカトリック教会の教えに聞き従いるために他なりません。それはまた、いとも聖にして母なる教会の一致から離れた離教者が、真の愛徳の絆によって再びこれに立ち帰るためでもあります。

これらの者たちのために、真心からなされる祈りの効力がいかに強いものであるかは、天主が毎日、闇の勢力から解き放って愛する御独り子の御国に導き入れ、怒りの器から憐れみの器に変えられる、あらゆる身分・境遇の人々の群が如実に示しています。思慮分別のある者の中、誰も、敬虔な信徒の祈りが、当の人々の回心に及ぼす影響を疑いはしないでしょう。

死者の霊魂を煉獄の火から解放するために祈りを捧げることは、使徒たちの教えに基づいていますが、これについてはすでに、ミサ聖祭についての章で十分に述べました45。

「死に至る」罪と呼ばれるところの罪46を犯す者たちにあたっては、[彼らのためになされる]祈り、祈願が当の人々に為す益は甚だ少ないと言わなければなりませんが、しかしながらキリスト教的愛徳は、彼らに対する天主の憤りをなだめるべく、涙を流すほど切なる祈りを彼らのためにささげることを求めます。

33.多くの聖なる著者が不敬な者らに対して為すところの呪いの言葉は、教父らの教えにしたがえば、当の者たちにふりかかるであろう禍の予言、あるいは罪の力が滅び、[罪]人が救われることを目した、罪に対する死の願いの文句に他なりません47。

34.祈りのもう一方の部分においては、天主が今日までたゆまず人類にお与えになり、また日々お与え続けられる諸々の神的かつ不朽の恵み48について、厚い感謝をささげます。しかるに私たちは、とりわけ全ての聖人について天主に感謝し、主がその慈愛あふれる御心から、当の聖人らが内外の敵全てに対して勝利を収めることをおゆるしになったことに関して、天主を誉め讃えなければなりません。

35.これは天使祝詞の最初の部分に該当します。すなわち、「めでたし」、「聖寵満ちみてる」、「マリア」、「主御身と共に在す」という言葉をとおして、私たちは、至聖なる童貞マリア[の霊魂]を満たされた全ての天的賜について天主に賛美と感謝をささげ、同時に聖母ご自身に特別の祝辞を述べるのです。

36.この感謝[の祈り]に、聖にして知恵深き公教会は、至聖なる天主の御母に対する祈りないしは祈願を加えましたが、これは、私たちがその御許に敬虔かつ切なる願いの心をもって馳せ寄より、罪人である私たちを、その執り成しによって天主と和解し、また地上および永遠の生命に必要な恵みをかち得てくださるよう願うために他なりません。したがってエヴァの子として、この涙の谷に流刑の身で留まる私たちは、あわれみの御母かつ信徒の代願者にたゆまぬ祈りを捧げ、聖母が私たち罪人らのために祈り、執り成してくださるよう願うべきです。かかる祈りをとおして私たちは、誰にも天主の御前におけるその抜きん出た功徳と、人類を救うご意志とを疑うことは許されない方の助力と救済とを乞い願うのです49。

【脚注】
37 ティモテへの第1の手紙 2章1節
38 コロサイ人への手紙 4章3節
39 テサロニケ人への第1の手紙 5章25節
40 使徒行録 12章5節
41 聖バジリオ <Liber Moralium Reg.>, 56. c.5
42 テルトゥリアヌス <Apologia> c.30 および <Epistola ad Scap.> c.2 参照
43 マテオによる福音書 5章44節
44 聖アウグスチヌス <Epist. 10 ad Vital.> / 聖チプリアヌス <De Orat. Domin.>(『主祷文注釈』および教皇チェレスツィアノ書簡1 参照
45 ディオニジオ・アレオパギテス <De Eccl. Hierarch.> III. lib. c.6-7 / 教皇聖クレメンス 書簡1/ テルトゥリアヌス <De corona milit. et in exhortationem ad castitatem et in lib. Mon.> および聖チプリアヌス書簡1 参照
46 訳者注:すなわち大罪のこと
47 聖アウグスチヌス <Euch. > cap.100 / <De Civitate Dei> (『神国論』)lib. 20 c.24 ; lib.21 および <Contra Faust.> cap.21参照
48 訳者注 ここで言う「恵み」とは、広い意味でのそれであり、超自然的な「恩寵」と必ずしも同義ではありません。
49 S. Augstinus Sermo 18 de sanctis / S. Ambros. in 1 cap. Lucae / S. Bern. hom.3 in Missus est 参照


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