家族についての説教(1)
ドモルネ神父
はじめに
今日は、イエズス、マリア、ヨゼフの、聖家族をお祝いしています。天主の御子である私たちの主イエズスは、家族の中に生まれ、地上の生活の30年間を、そこで過ごされました。このことは、人間の生活における家族の重要性を、はっきりと示しています。そこで、家族についての真理を、いくつか思い起こしていただきたいと思います。
1.家族は天主が定められた制度である
家族は、人類の始まりの時に、天主ご自身が定められた制度です。創世記には、こうあります。「天主は、ご自分にかたどって、人間をつくり出された。人間を天主のかたどりとし、男と女とにつくり出された。天主は、人間を祝福して仰せられた。『生めよ、増えよ、地に満ちて、地を支配せよ』」(創世記1章27-28節)。天主ご自身が、家族と、その土台、その使命、その権利を定められました。家族の土台は、一人の男と一人の女が、生涯にわたって互いに結びあう、という婚姻の契約です。家族の第一の使命は、新しい人間を生み、教育することです。家族は、人間の命の源であり、子どもが、肉体的、霊的に成長するための枠組みです。家族の第二の使命は、夫婦が相互に助け合うことです。家族は、その使命を果たすために、必要な自由と手段を、その権利として、与えられなければなりません。
私たちの主イエズスは、公生活の最初の日に、カナの婚礼に参列することで、家族の重要性を確認されました。新郎新婦のために最初の奇跡を行うことによって、私たちの主は、家族に対する天主の最初の祝福を、更新されました。またそれどころか、主は、婚姻の契約を秘跡、すなわち聖化の源泉とさえされたのです。
2.家族は国家に優先する
重要なことは、天主ご自身が、直接、家族制度を制定された、ということです。しかし、天主は、直接、国家や政府を制定されたわけではありません。このことが意味するのは、家族は、国家に優先する、ということです。教皇ピオ十二世は、こう言っています。「家族が、社会のためにあるのではなく、社会が、家族のためにある」。国家の義務は、家族を保護し、夫婦に、その使命を果たすための手段を与えることです。
このことから直ちにえられる結論は、国家には、家族の構造を変える権限はない、ということです。もし、国家がそのようなことをすれば、それは、重大な権力の濫用です。それは、例えば、離婚や、自然に反する結合を認めることです。国家には、夫婦が子どもを生み、教育する使命を妨害したり、制限したりする権限はありません。もし国家がそのようなことをすれば、それは、重大な権力の濫用です。それは、例えば、夫婦が二人以上の子どもを持つことを禁じたり、大家族を持つことを不可能にするような社会状況を作り出したり、子どもの教育を公的機関で行うことを強制したりすることです。
3.結婚の善
カトリック教徒の夫婦が結婚して家族を築くとき、三つの善を受けます。その三つの善とは、夫婦の貞節、婚姻の秘跡、そして子どもを持つ権利です。教皇ピオ十二世は、この三つの善を、ご公現の祝日の、三人の博士たちの、イエズスへの三つの贈り物に例えています。家族の黄金は、夫婦の貞節です。家族の乳香は、婚姻の秘跡です。家族の没薬は、子どもです。そして、教皇ピオ十二世は、三人の博士たちが黄金と乳香と没薬を、天主に捧げたように、カトリック教徒の夫婦も、この三つの善を、天主に捧げるように勧めました。
今回は、家族の黄金、すなわち、夫婦の貞節についてだけお話しします。
4.家族の黄金:夫婦の貞節
教皇ピオ十二世の言葉を紹介します。「黄金は、その美しさ、その輝き、その不変性のゆえに、最も貴重な金属です。その価値は、他のすべての富の基礎であり尺度です。ですから、家族のあらゆる幸福の基礎と尺度は、夫婦の貞節です。ソロモンの神殿では、金属を変色させないため、また建物全体を装飾するために、黄金で覆われていない部分はありませんでした(列王の書上6章22節)。貞節も、同じです。夫婦の結びつきが、堅固で輝くものであるためには、それは完全に貞節で覆われ、包まれていなければなりません。黄金は、その美しさと輝きを保つためには、純粋でなければなりません。同様に、夫婦間の貞節は、完全で、汚れのないものでなければなりません。貞節が崩れ始めたら、家族の信頼と平和と幸福は、失われます。預言者エレミヤは、神殿の黄金が変色し、鮮やかな色を失ってしまったことを嘆きました。しかし、それ以上に嘆かわしいのは、貞節が汚された夫婦です。夫婦の黄金(エゼキエル7章19節)は、ちりあくたと化してしまいます。夫婦の美しい調和という宝は、すべて、疑惑、不信、非難の混じり合った、あわれな腐食へと進み、それはしばしば、取り返しのつかない傷につながるのです。そのため、天主なる幼子へ、皆さんが最初に捧げるべきものは、自分たちの婚姻の約束に、いつも忠実であり、かつそのための注意を怠らない、という決意なのです」。
親愛なる夫婦の皆さん、この教皇の勧告は明確です。皆さんは、夫婦の貞節を守らなければなりません。したがって、夫婦の貞潔を危険にさらすようなことは、何であっても、絶対に拒否しなければなりません。それは、泥棒が皆さんの家に侵入して、黄金をすべて盗むことよりも、悪いことです。皆さんの家族の中でも、付き合う人、テレビやインターネット、新聞や本、漫画、音楽や歌、服装などをチェックしてみてください。
逆に、夫婦間の友情を育み、それによって夫婦の貞節を増進するものは、何でもすべて、促進するべきです。それは、お互いの尊重、日常生活での助け合い、お互いへの信頼と親密さ、親しい会話、家庭内の秩序と清潔、一緒に子どもの世話をすること、そして何よりも、共に永遠の命を得る望みを持つことです。
結論
私は、この説教の締めくくりに、皆さんの家の玄関の扉の上に、ご公現の祝福を刻むことをお勧めします。ご公現とは、三人の博士たちに代表される世界のすべての国々に、イエズスが現れられたことを意味します。日本は、世界の他の国々と同様に、私たちの主イエズス・キリストに属しています。主は、日本において、公に統治なさらなければなりません。しかし、この日本におけるイエズスの統治は、皆さんのキリスト教徒としての誇りを通して、皆さんの家族や家庭で始まるのです。